書籍詳細
旦那様は新妻を(予想外に)愛しすぎてます
あらすじ
俺たち、そろそろ本当の夫婦にならないか?
契約上の夫婦のはずが、いつしか本当の恋に落ち……!?
友人に多額の借金を押しつけられてしまった知依。そんな大ピンチを救ってくれたのは、知依が働く会社のイケメンCEOで、幼馴染みでもある久我山崇だった。けれど、その条件は彼と結婚するというもので……。契約上の結婚なのに、崇の甘いイジワルと思わせぶりな接近にトキメキが抑えられなくなった頃、プロポーズされた本当の理由を知ってしまい!?
キャラクター紹介
静 知依(しずか ちえ)
税理士をめざすOL。上司で夫の崇とは幼馴染みで、家族ぐるみの付き合い。
久我山 崇(くがやま たかし)
二つの会社を経営するエリート会計士。イケメンだがちょっと強引なところも。
試し読み
胸の中に湧き出る喜びをじっとかみしめている姿を誤解したのか、崇が腕に込める力を強くする。
「昨日お前が俺のこと『嫌いになる』って言った。あれは『まだ好きだ』っていうことだろ? その言葉はまだ有効なのか?」
どうしたことだろう。必死な崇の姿を見て愛おしさがどんどん増していく。
知依は怒っていたことも忘れて、思わずクスクスと笑い出してしまった。ひとしきり笑ったあと、はたと気が付く。
それまで何かしら話をしていた崇がだまりこくったままだということに。
「崇くん?」
名前を呼んで振り向いた瞬間、強引にその場に押し倒された。
横になった知依の上に、崇がのしかかってくる。至近距離で見る真剣な顔に知依の心臓がトクンと甘い音を立てた。
「俺は、自分の気持ちを全部伝えた。知依は……どう思ってるんだ」
熱い思いのこもった瞳を見つめ返す。知依は一度浅く呼吸をしたあと、自分の思いを余すことなく伝えるべく口を開いた。
「嫌いになんてなれるわけない。だから昨日の哲くんとの話を聞いたときショックで、嫌いになってしまえればあんなに泣くこともなかったと思う。昨日は必死になって自分に言い聞かせたの。夢だと思おう。崇くんが自分みたいな普通の女と理由もなく結婚をするはずなんてないって」
「知依、それは――」
崇が口を開いたが、知依は人差し指を彼の唇にあてて発言を止めた。ちゃんと最後まで自分の話を聞いてほしかったからだ。
崇も知依の意図することを理解してそのまま黙った。
「でも、そう思い込もうとしたけどできなかった。崇くんがどういうつもりでも、やっぱり私はあなたが好きだから。だから傷ついたし、諦められないとも思ったの」
知依はゆっくりと手を伸ばし、そっと崇の頬に触れた。
「他の誰かじゃダメなの。わたしの好きな人はあなただから」
知依の言葉に、崇は一瞬軽く目を開いて驚いた。その後それを噛みしめるように目を閉じゆっくりと開いた。
知依は彼の瞳に映る自分の姿を見つけた。まっすぐに向けられる目に込められたあふれるほどの愛情を感じ、胸に悦びが広がる。
しかしゆっくりとその余韻にひたろうとした知依の唇が崇によってふさがれる。彼の思いをぶつけるような激しいキスに、ぎゅっと目を閉じた知依の瞼の裏にチカチカと星が瞬いた。
「ん……ちょっと、た、崇く……ん」
彼の肩を押して距離を取り、抗議の言葉を口にしようとして開いた唇から、彼の熱い舌が遠慮なく差し込まれる。
崇の舌はすぐに知依のそれを捉えてからめとる。彼とのキスに慣らされていて自然と彼の舌の動きに応えてしまう。
(……ダメだって思ってるけど……でも逆らえない)
次第に崇に与えられる心地よい快感だけに集中してしまう。彼から与えられるものだけで体が満たされている心地よさに、知依の体の力が抜ける。
知依が抵抗をやめたのを見計らったのか、下唇を音をたてて吸い上げた後その形の良い唇を知依の耳元に寄せた。
「うれしいよ、知依。俺の初恋をかなえてくれて」