書籍詳細
クールな御曹司は最愛のママとシークレットベビーを溺愛したい
あらすじ
「一生をかけて幸せにすると誓う」極上育メンパパのとろける求愛♥
エリート御曹司・佳と結ばれ、赤ちゃんを授かった理咲。しかし、とある事情で彼の元から姿を消し、密かに出産。シングルマザーとして子どもを育てていたところ、佳と再会して――「理咲に触れたい」以前にも増した溺愛で、甘やかに心を搦め捕られて…。赤ちゃんごと一途に愛され、結婚も求められて、理咲は幸せを感じつつ、佳への強い愛情が再燃し…。
キャラクター紹介

一ノ瀬理咲(いちのせりさ)
銀行頭取の娘で、三姉妹の三女。事情があり実家を出てカフェで働いている。

小鳥遊 佳(たかなしけい)
外食産業チェーンの御曹司。理咲の働くカフェの常連で、甘いものが好き。
試し読み
私と佳歩は母の了承を得て、佳さんの住むマンションに引っ越しをした。
私は家出をしたようなものなので荷物の大半が実家にある。
アパートに住んでいた時も一時的な借り暮らしのようなもので大した荷物はなかった。その為、叔母さん宅からの引っ越しの時も私と佳歩の手荷物位で済んだ。
佳さんのお休みに合わせて引っ越しをして、五日が経つ。佳歩も環境の変化に怯えることもなく、普段通りに過ごしている。
「佳歩の部屋もいずれは必要になるし、もう少し大きくなったら一軒家か部屋数が多いマンションへの引っ越しも検討しなければ……」
佳さんは佳歩を抱っこしながら呟いた。
「まだまだ先ですよ」
「そうかもしれないけど、購入するならば早い方が良いから後々に検討しよう」
購入するとなれば住宅ローンのこともあるので、早めに考えたいと佳さんは言っている。
確かに佳歩の部屋も考えてあげなければいけないし、佳歩に弟や妹が産まれれば、その子達の部屋も考えなければならない。
「その前に理咲のご両親にご挨拶に行って、結婚することを認めてもらわなきゃね」
「……そうでしたね。佳さんのご両親にもご挨拶をしてないので、早めに行きましょう」
佳さんの希望もあり、引っ越しを先にしてしまった私達。
ご挨拶も入籍もしてないまま、同棲という形になってしまっていることに後ろめたさはある。しかし、佳さんには佳さんの事情があるらしく、今すぐにという訳にもいかないようだった。
「佳さん、お風呂の準備が出来てますよ」
「ありがとう。いつも通りに呼んだら、佳歩を連れて来て」
「分かりました、佳さんが呼んだら連れて行きます」
引っ越ししてから、佳さんが早く帰れる日は佳歩をお風呂に入れてくれている。
佳さんが先に入って自分の髪と身体を洗った後に呼ばれ、佳歩を浴室に連れて行くのがルーティーン。
佳歩も嫌がらずに入って、お風呂の後は赤ちゃん用の麦茶を飲む。
私がお風呂上がりの佳歩に洋服を着せ、哺乳瓶で麦茶を飲ませるのは佳さんの役割だ。
最初はおっかなびっくりでお風呂に入れていた佳さんも今では慣れてきたようだった。
佳さんに呼ばれたので佳歩の洋服を脱がせ、浴室に連れて行く。
「宜しくお願いします」
佳歩は気持ち良さそうに湯船に入っている。佳さんはガーゼで佳歩の首周りを優しく拭く。
佳歩がお風呂に入っている間に哺乳瓶に麦茶を準備しておく。
湯船から上がるまでに洋服のミルク汚れなどを無添加洗剤でゴシゴシと手洗いしてから洗濯機に投入する。
赤ちゃんは可愛いけれど、お世話が沢山あるので大変なのだ。
赤ちゃんの佳歩と一緒に過ごしていると一日なんてあっという間だ。だが、こんなにもベッタリ一緒に過ごす日々は今しか出来ないので幸せを嚙み締めながら頑張っている。
「寝ちゃった」
「佳さん、そのままベビーベッドに寝かせて下さい」
佳さんは初めての経験にもかかわらず、抱っこの仕方やオムツ替えなど、スムーズに行っている。
仕事から帰ってきて、合間を見ては育児書も読んだりして、いつも熱心に佳歩に向き合ってくれていた。
「佳さん、遅くなりましたけど……夕食にしましょう」
今日はいつもよりも少しだけ、佳さんの帰りが遅かった為に夕食の時間が遅くなった。
「いただきます」
佳さんは佳歩を寝かせてから、キッチンにあるテーブルに座って夕飯を食べ始めた。
「理咲、この鯖の味噌煮美味しい」
「電気圧力鍋を使って煮てみました。こんなに骨まで柔らかく美味しくなるなんて自分でもビックリです」
今日の夕食は和食。
佳さんは、私と離れている間に電気圧力鍋が便利だと聞いて購入した。
朝起きて下準備をして、帰ってきた時には調理が出来ている仕組みだ。
佳さんは朝の時間に余裕がないらしく、結局は使わずにしまっておいたらしい。
私は佳さんから電気圧力鍋を引き継ぎ、レシピを調べながら色々と挑戦している。
「電気圧力鍋も理咲に使ってもらえて嬉しいと思うよ。俺は一度で断念したから」
「佳さんはお仕事忙しいのですから、仕方ないですよ。私は今、佳歩のお世話をしながら毎日の献立を考えて、散歩をしつつ買い物もして、佳さんの帰りを待っています。私だけ、こんなにも幸せな毎日を過ごしても良いのかな? って思います」
「私だけ……じゃなくて、俺も一緒だよ。こんなにも幸せな毎日は初めてだ」
佳さんは私のどんな料理でも喜んで食べてくれる。電気圧力鍋で調理したものも、たまには失敗もある。
佳歩がご機嫌斜めで泣き止まなくて辛い時も、一緒に居る時は手助けしてくれる。
佳さんが抱っこしてあやしている内に泣き止んで寝る時もしばしばあり、パパの存在は偉大だと感心する。
「佳歩に離乳食を食べさせたり、一緒に遊んだり、これから楽しみなことが沢山ある。理咲を探し出せなかったら、この幸せが全部なかったかと思うと考えたくもないな」
「そうですよね、現在の生活に慣れてしまったから想像すると怖いです……」
佳さんは離乳食を作るのも楽しみにしていて、育児雑誌を熱心に眺めては育児用品を購入しようとしている。
お持ち帰りした仕事も手付かずのままに、佳歩の身の回りのお世話グッズのネットショッピングのサイト閲覧に没頭している時もある位だ。
大抵は『今、ある物で大丈夫です』とお断りしているが、そんな時はシュンとしている。
落ち込んでいる佳さんには申し訳ないのだが、佳さんの色んな顔が見られて嬉しいと私は思う。
「可愛い理咲の顔を見ながら食べる夕飯は、尚更、美味しい」
しれっとした言い方をしながら副菜を食べる佳さん。少し照れているのか、私の顔は見ない。
「……わ、私は、佳さんの顔を見ながら食べる夕飯は、逆に味なんて分からないです。自分の作ったものだから余計に、佳さんの綺麗な顔には負けちゃうんですよ」
「綺麗?」
「そうです、綺麗に整い過ぎてる位です。だから見惚れてしまって、あんまり味が分からない」
初めて一緒に御飯を食べた日はそれ程まで意識はしてなかったのだが、お付き合いを始めてからは妙に意識をしてしまっている。
自分のモノになった途端に独占欲が生まれた。
完璧なまでに好み過ぎる佳さんを無条件に眺めていられる為、独り占めできる時間は思わず見入ってしまうのだ。
「綺麗とか言われたのは理咲が初めてだな。会社ではいつも、怖いとか言われてるから」
「私は全然怖くないですけども?」
きっと、佳さんの二重だけど切れ長な瞳に釘付けになってしまうのが怖くて、拒絶したフリをしているのだろう。
「理咲はそうだろうね。初めて会った時から俺に対して優しい態度だった。俺がお客だったっていうのもあるだろうけど、それだけじゃない優しさが溢れていたから」
「私、そんなに優しくないと思いますよ?」
普段はクールで寡黙な佳さんは、私の前や佳歩の前だと違う顔を見せる。加賀谷さん、彼の前では知らない佳さんが沢山出てくる。
たわいのない話をしながら夕食を済ませると、後片付けを手伝ってくれる。
「すみません、片付けまで手伝って頂いて」
私はテーブルを拭き、佳さんはお皿を元の場所に戻す。
「理咲、いつまでも他人行儀をしない。俺達は家族になるのだから」
「そうですよね、気をつけます」
コツン、と軽く拳で頭を叩かれる。
佳さんはテキパキと残りの後片付けを手伝ってくれて、私がお風呂に入っている間にノンカフェインの紅茶も用意してくれた。
「お取り寄せしてみた紅茶だけど、どうかな?」
「わぁっ、ふんわりと良い香りがします。苺の紅茶ですか? ……美味しい!」
甘い香りが漂い、心が和む。
隣同士に並んで飲む紅茶がこんなに美味しくて、幸福な時間だということを改めて実感する。
「つい先日まで、理咲が居なくて一人で御飯も食べてたとは思えないな。今、目の前に理咲が居るから、そのこと自体が夢みたいだ」
佳さんはカップを片手にしみじみと語る。
「私こそ、夢みたいです。今がこんなにも幸せだから、夢から醒めてしまったらと思うと怖くなります」
目が合った時、佳さんと微笑み合った。
シングルマザーとして新たな一歩を歩き始めた時の決意は現在の生活によって、かき消される。
悩んで苦しんで、それでいて前向きに生きようとした時、それも今では良い思い出だ。
佳さんの前から姿を消してから、約十一ヶ月の月日の隙間があった。
家族として一緒に生活する、その幸せが約十一ヶ月の月日の隙間をいとも簡単に埋めていく。
「理咲のご家族にご挨拶が済んだら、まずは佳歩の認知届を出す」
「認知届?」
「調べたら戸籍に関する決まり事があるらしい。佳歩は紛れもなく俺の娘なのだから、任意の認知届を出してから入籍届を出す」
「調べてくれてありがとうございます」
「区役所は土日も認知届と入籍届を受け付けているらしい」
「そうなんですね。土日も受け付けしているのならば、二人で出しに行けますね」
「ご挨拶したその日に行くのは佳歩が疲れてしまうだろうから、日を改めての後日にしようか?」
「その方が良いかもしれません。うわぁ……、今からドキドキしちゃいますね」
二人で区役所に行き、認知届並びに入籍届を提出することを考えるだけでドキドキする。
付き合い始めて月日が経たぬ内に妊娠が発覚して、佳歩が産まれた。
佳さんとの付き合いの期間は浅いが、お互いに惹かれ合い、信頼しているからこそ月日の長さは気にしない。
「理咲も佳歩も俺の手の届く範囲に居てくれるから焦ってはいないけれど本音は一刻も早く形式上でも家族になりたいと思っている。たった紙切れ一枚のことなのに、理咲を独占出来ると思ったら、こんな喜ばしいことはないな、って思うよ」
佳さんは真っすぐに私を見ながら、気持ちをぶつけてくる。
「わ、私も佳さんを独占出来ると思うと嬉しいです。入籍したら、もう……、誰にも遠慮なんていらないですよね?」
「そうだよ、遠慮なんていらないんだよ。だから、今まで離れていた分の時間を取り戻したい」
佳さんは私の頭を優しく撫でて、自分の胸元に抱き寄せる。
佳さんの心臓の音がトクン……トクン……と規則正しく聞こえてきた。
「これからは家族三人の思い出を沢山作りましょうね」
私は佳さんに力強く抱き着いて、温もりを確かめる。
スーツ姿じゃない佳さんは前髪を下ろしていて、年齢よりも若く見える。
「理咲、顔を良く見せて」
少し間を置いてから、佳さんの声が聞こえて上を向く。
「もう、理不尽なことで泣かせないからな。俺を信じてついてきてくれないか?」
「はい、頼りにしてます。私は佳さんを信じていますよ」
私達はお互いの顔を見合わせ、瞼を閉じる。
重なり合う唇が触れ合うだけでは足りなくて、佳さんは私をソファーに押し倒す。
離れていた期間の隙間を埋めるように、何度も何度もキスをする。
「け、い……さ……、んっ、」
佳さんのマンションに引っ越しをしてから、初めてのキスだった。最初は優しく触れるだけのキスだったが、次第に激しく求め合うようなキスに変わっていった。
「理咲に触れたい」
佳さんは真上から私を見つめる。
私の答えなど待たずに手を伸ばし、ナイトウェアのボタンを一つずつ外していく。
久しぶりに佳さんに求められ、胸が高鳴っていく。