書籍詳細
初恋のお義兄様に激愛を刻まれ、禁断の夜に赤ちゃんを授かりました
- 【初回分限定‼】書き下ろしSSペーパー封入
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- 【書泉限定‼】有償アクリルコースター付き特別版
- 【電子書店限定‼】巻末に書き下ろしSS収録
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あらすじ
「君もお腹の子も一生かけて守っていく」玉砕覚悟の片想いのはずが、とろ甘な愛を注がれて♡創刊5周年マーマレード文庫初回分限定SSペーパー付き!
義兄の志貴に幼い頃から想いを募らせていた雅だが、彼と女性の親しげな姿を目撃。この恋を決定的に諦めるため、志貴に想いをぶつけることに。ところが、意外にも告白を受け止めた彼に情熱的に溶かし尽くされ…。「誰にも渡さない。俺のものにする」――その夜を機に、これまでの“兄妹関係”を超越した志貴の溺愛が加速し、さらに雅の妊娠も発覚して…!?
キャラクター紹介
佐生 雅(さそうみやび)
幼い頃から義兄の志貴に恋心を抱いている。そのため、他の男性との恋愛に踏み出せない。
佐生志貴(さそうしき)
血の繋がりがない七つ年上の雅の兄。雅を存分に甘やかし、大切にしている。
試し読み
「どうする?」
目を見て尋ねられたが、とっさに返答に困った。そうしているうちにこつんと額を重ねられる。
「母さんにはああ言ったけれど、雅が望むのなら今から送っていくよ」
私の希望を優先してくれる、優しくて自慢のいつもの兄だ。……でも、もういらない。優しくなくても、拒絶されても妹としてではなく異性として見てほしい。
私は小さくかぶりを振った。
「いい。私が望むものは……ずっと前からひとつだけなの」
また泣き出しそうになりながらも訴えると、志貴は切なそうに顔を歪め私との距離を縮めた。
「進んだらもう戻れなくなる」
唇が触れるか触れないかの距離で確かめるように告げられる。それは私に言っているのか、彼自身に言い聞かせているのか。どちらでも私の答えは決まっている。
「うん」
それでもいい。声になったのか、ならなかったのか。目でも答えたら再び志貴から口づけられる。さっきは突然のことで頭がついていかなかったが、唇の温もりや柔らかい感触にこれは現実なのだと実感する。
少しは私の気持ちに応えようとしてくれている? 期待してもいい?
目を閉じて受け入れながら、あれこれ浮かんでは消えていく。角度を変え重ねるだけの口づけが繰り返され、その間私はどうすることもできず無意識に息を止めていた。
「雅」
唇が離れたのとほぼ同時にすぐそばで名前を呼ばれ、おそるおそる目を開けた。志貴は私の頤に手をかけ、親指の腹でゆっくりと濡れた唇をなぞっていく。心臓が爆発しそうだ。
「キスも初めてなのか?」
遠慮気味に尋ねられ、違う意味で顔が熱くなった。この年で、と思われるのも恥ずかしいのだが、それ以上に今のキスで経験がないとバレるほどに私の対応はなっていなかったらしい。
返答を迷ったが、ここで見栄を張ってもしょうがない。ずっと彼に片思いをしていたとはいえ、引かれてしまったのか。
「ごめん……なさい」
蚊の鳴くような声で謝罪したら、唇に触れていた志貴の親指が止まる。
「謝らなくていい。嫌なのかと思って」
「い、嫌なわけないよ!」
彼の言葉をすぐさま否定する。そんなふうに思われるのは心外だ。
「嫌なわけない。……ずっとこんなふうにしてほしかった」
思い切って本心を告げたら、志貴は目を丸くした後、困惑気味に軽く唇を重ねてきた。続けて至近距離で目が合う。
「雅。心配しなくていいから少し力を抜け。息も止めるな」
諭すように告げられ、引き結んでいた唇をかすかに緩めるとキスが再開された。触れ合うだけの柔らかい口づけが幾度となく繰り返され、ちゅっちゅっと耳慣れしないリップ音がやけにはっきりと聞こえる。鼓動が速いのは、もうどうしようもない。
そうやっていると、次第に焦らされているような物足りなさがじわじわと湧き上がってくる。
この感情をどう処理すればいいのかわからずにいたら、そのタイミングで唇の隙間に舌先が滑らされた。驚きで反射的に腰を引きそうになるが、志貴の腕が回され阻止される。
「あっ」
そちらに気を取られている隙に彼の舌が口内に侵入し、私の舌はあっけなく捕まって、絡め取られた。
「んっ……んん」
意識せずとも鼻に抜ける甘い声が漏れ、羞恥心で体が熱くなる。心臓が痛いほど強く打ちつけ破裂しそうだ。不安でぎゅっと志貴のシャツを掴むと、彼はなだめるように私の頭や髪を撫でてくれた。慣れた手のひらの感触に安心して涙が滲む。
経験はないが知識はそれとなくある。ところがぎこちなく自分から舌を絡めようとするも、うまくいかない。主導権を握れるとまでは思っていないが、本当にされるがままだ。
どうしよう。わからない。
「んっ……ふぅ……」
唾液が混ざり合う音が耳からではなく直接頭に響く。時折漏れる声と合わさり、吐息も熱い。五感すべてで今の状況がありありと身に染みていく。
けれど嫌な気持ちも不快さもまったくない。それどころか徐々に頭がぼうっとしてきて、さっきまであんなに強張っていたのが嘘のように体の力が抜けていく。
うっすらと目を開けると整った志貴の顔がそこにあり、彼はゆるやかに目を細めて私の頬に触れた。
好き……大好き。
ずっと秘めていた感情が胸いっぱいになり、離れたくなくて大胆にも彼の首に腕を回す。さらに距離が縮まりますますキスは遠慮のないものになっていった。
舌先を軽く吸っては絡め取られ、さらに奥深くを求められる。厚い舌に歯列をなぞられ、頬の内側を舐め取られたときは勝手に体がびくりと震えた。
気持ちいいけれど、怖い。こんな経験初めてだ。そっと解放された瞬間、志貴と目が合う。今まで見たことがないような色めく瞳に息を呑んだ。
けれどすぐに彼にもたれかかる形で抱きつき、顔が見えなくなる。正確には見ていられなかった。自分も今、どんな表情をしているのか。
無意識に酸素を取り入れようと肩を揺らし、大きく息を吸った。そんな私の頭を彼は優しく撫でてくれる。
なにか言わないと、と思うのに声が出ない。その代わり、回した腕にさらに力を込めた。
「大丈夫か?」
心配する声が降ってきて、必要以上に大きく頷く。
「大、丈夫」
改めて呼吸を整え、上目遣いに志貴をうかがう。すると彼は素早く私の唇を掠め取った。
「責任を取ろうか?」
「え?」
真面目な面持ちで問いかけられ目を瞠る。頭に触れていた彼の手が気づけば頬に添えられていた。
「雅が……本当に俺しかいらないのなら……他の男なんて見なくていい。好きになる必要もない」
いつもの穏やかさはまったくなく、怖いくらい真剣な表情に瞬きひとつできない。
「誰にも渡さない。俺のものにする」
凛とした声は鼓膜を震わせ、心臓と共に私の心を鷲掴みにする。続けて耳鳴りがしそうなほどの静寂が降りてきて、しばらく迷ったのち私から口を開く。
「そ、それは……妹としてじゃなくて、その……」
まだどこかで信じられない気持ちがあった。この状況も、志貴の言葉も。それほどまでに長い間、彼への想いを一方的に募らせてきたから。
私の言葉に志貴はややあきれた顔になる。
「今のキスじゃ物足りなかったか?」
「そ、そういう意味じゃないの。あっ」
慌てて否定しようとしたら、耳に口づけが落とされつい反応してしまう。
「なんなら、もっとわかるように雅を求めようか?」
「んっ」
わざと吐息交じりに耳元で囁かれ、志貴の手が服越しに私の脇腹を撫で始める。反射的にびくりと体が震えたが、私はぎゅっと目をつむった。薄手の服だからか彼の手の大きさや感触がよくわかる。
ところが、どういうわけか手の動きがぴたりと止まり、私はゆっくりと目を開けた。
「ほら。わかったら、今日はもう」
「やめる、の?」
私の言葉に志貴は目を見開き、ややあって気まずそうに目線を逸らした。
「焦る必要はない。雅の気持ちはわかったから」
「うん。だからもっとしてほしいの」
引かずに自分の主張を押し通す。なんとなくいつもの兄と妹みたいなやりとりになってしまうのが嫌だった。今やっと彼との関係を変えられそうなのに。
「好き、だから」
うまく説明できずにもどかしい。志貴は眉をひそめ複雑そうな表情になる。
私、自分の気持ちだけで急ぎすぎた? 私はずっと想い続けていたけれど、志貴にとっては寝耳に水の状態だったかもしれない。そもそも性急すぎだってあきれられたか、はしたないと思われたのかも。
「途中でやめてやる自信がない」
自己嫌悪に見舞われている中、彼がぽつりと漏らした内容は予想外のものだった。まさかそういう意図だったとは思わず、逆にどこまでも私を大事にしようとしてくれる志貴に、ますます好きという気持ちが増幅する。
その勢いに圧され自分から彼に口づけた。ただ唇を押し当てるだけの拙いものだと自覚はあるけれど、今の私の気持ちを少しでも伝えたくて。
応えるように唇を食まれ口づけを終えた次の瞬間、膝の下に腕を滑り込まされ彼に抱き上げられた。
「きゃっ」
あまりにも慣れた様子で志貴は歩を進め出す。
「昔はこうやって甘えてくる雅をよく運んだな」
「い、今は重いし、ひとりで歩けるから」
恥ずかしさも相まって、志貴にしがみつきながら訴える。たしかに幼い頃は自分から抱っこしてほしいと彼によくせがんだ。志貴は嫌な顔ひとつせず、こうしてお姫さま抱っこをして、私を甘やかしてくれた。
「下ろして」
居た堪れなさに身を縮めて懇願する。しかし志貴は私の要望を無視して額にキスを落とした。
「重くないし、今でも俺は雅を甘やかしたいんだ」
そう言って連れて行かれたのは、寝室だった。このマンションには何度か足を運んだりはしたが、さすがにこの部屋には足を踏み入れたことはない。
部屋の電気は消えていたが、ドアを開けたときに廊下からの光でかすかに見えた。白の壁紙は奥行きを感じ、真ん中にグレーの大きめのベッドがあった。目を慣らそうと薄暗い部屋の中に視線を飛ばしていたら、そっとベッドサイドに下ろされた。続けて志貴は慣れた手つきでナイトテーブルの上にあるスタンドライトを点ける。
暖色系のほどよい明かりが部屋を照らし、彼は私のすぐ隣に同じように腰を下ろす。改めて目が合い、緊張感が一気に増す。
「あの、お兄」
落ち着かずに口火を切ったら、キスで遮られた。
「さすがに〝お兄ちゃん〟はやめてくれないか?」
「あっ……」
ついいつもの癖で呼びかけそうになったが、この状況ではおかしな話だ。とはいえなんて呼べばいいのか。
「うん。志貴……くん?」
私より年上で、下の兄はくん付けしている。その事実を考慮して呼んでみたが、苦笑される。
「くんもいらないよ」
「……志貴」
いざ本人を前にすると、なんだか照れくさい。しかし彼は、今度は嬉しそうに笑った。
「ん。雅にそんなふうに呼ばれる日が来るなんてな」
「だ、だめ?」
やはり違和感があるのだろうかと焦ったが、志貴は微笑んだままだ。
「いや、いいよ。もっと呼んでほしい」
「あっ」
ちゅっと音を立て耳たぶに口づけられる。左手は私の腰に回され、右手は再び脇腹辺りを撫で始めた。やがてその手は徐々に上に伸びてきて胸元に触れる。
「やっ……」
不快や嫌悪ではなく、恥ずかしさと初めての感覚に声が漏れた。
「嫌か?」
尋ねたわりに志貴は手を止めない。もちろん嫌ではないけれど、なかなか素直に受け入れられない。
優しく揉まれ、恥ずかしさと言い知れないもどかしさが混ざり合って、身をよじりたくなった。でも腰に回された彼の腕がそれを許さない。
指先や手のひらを使って緩急をつけながら両方の胸を刺激され、びりびりと電流が走るような錯覚に陥る。
「んっ……」
「素直で可愛いな、雅は」
艶めかしい吐息が意図せず漏れ、志貴はおかしそうに囁いた。どういう意味なのか考える余裕もない。
「直接触ろうか?」
「あっ、でも……」
彼の提案にとっさに乗れない。すると志貴はこちらに体を寄せ、耳に顔を近づけてきた。
「もっと雅を気持ちよくしたい」
わざと耳に吐息を吹きかけられ、その間に裾から手を滑り込まされた。
「あっ」
服越しと直に肌に触れるのが、こんなに違うものだとは思いもしなかった。体温も感触もすべて先ほどの比ではないほど直接的に伝わる。
「志、貴」
「ん、温かい。……柔らかくて、おまけに感じやすい」
助けを求めるように名前を呼ぶと、上の服を脱がす形で彼の両方の手が肌を滑っていく。胸元まで服をたくし上げられ、私はある事実に気づいた。
「だめ!」
突然の拒絶の声に驚いたのか、不意に志貴の手が止まる。
「どうした?」
「その……下着、普通のだから」
改めて問われると、なんとも気まずい。しかし志貴はますます理解できないといった顔になった。
「普通?」
「あんまり可愛くなくて、だから、その……できれば見られたくない」
こんな事態になるとは露も思わず、慣れたシンプルな下着を着けてきてしまった。さらには上下セットのものでもない。
「そんなことで?」
「だって……私、今日はみっともないとこばかり見せているから」
ずぶ濡れでやって来て、それからサイズの合わない部屋着を借りて、ずっとノーメイク。こんなときにムードのひとつもつくれない。
今まで志貴が付き合ってきた女性はきっと、ちゃんと綺麗にしていたに違いない。こういう場面でも動じずにいて……そう考えると、こんな言い分こそ子どもっぽいと思われてしまいそう。
ぎゅっと無意識に服の裾を引っ張る。
「みっともなくない。そんなふうに思う必要はまったくないんだ」
気持ちが沈みそうになるが、志貴の力強い声で我に返る。彼を見たら、志貴はこつんと額を重ねてきた。
「雅は飾らず自然体でいてくれるのがいいんだよ。素直で真っすぐなところに、俺は何度も救われてきたんだ。だから無理せずそのままでいてほしい」
懇願するような物言いに私は押し黙るしかない。そんな顔をされたら、嫌だと言えなくなる。
「どんな雅でも可愛くてたまらないんだ。今も昔も」
ところがやや軽い調子で続けられ、ん? と思ったのとほぼ同時に、トップスの裾を勢いよく持ち上げられ、抵抗する間もなく、万歳する形で脱がされる。完全に油断していた。
「ちょっ」
抗議の声はキスで封じ込められる。
抱きしめるように背中に腕を回され、器用にブラのホックをはずして、剥ぎ取られた。下着を気にするどころか、上半身にまとうものがなくなり肌が空気に晒される。心許なさと恥ずかしさで涙が滲みそうだ。
「んっ……ずる……い」
口づけに翻弄されながら必死に訴えるが、ほぼ無意味だ。それどころか露わになった背中に彼の手のひらが這わされ、体が震える。
「あっ」
ゆっくりとそのままうしろに倒され、ベッドを背に志貴に覆いかぶさられた。ぎゅっと抱きしめられ、二人分の体重にベッドが軋む。肌を掠める短い黒髪、吐息、彼の重みがダイレクトに伝わり、心音が相手に聞こえるのではないかと思うほど大きい。
「雅」
名前を囁かれ、耳元だったのもありつい身を縮める。ゆるやかに顔を上げた志貴と目が合った。
「もう遠慮しない。全部見たいんだ。俺しか知らない雅を見せて」
いつもにも増して艶っぽく、瞳の奥はかすかな獰猛さが揺らめく。私を気遣いながらも余裕のなさそうな声と表情は、まさに大人の男の人の顔だ。
直視できず、胸が高鳴って苦しい。目を泳がせて答えを迷っていたら、強引に口を塞がれた。