書籍詳細
身分違いのかりそめ妻ですが、ホテル王の一途すぎる独占愛欲で蕩かされています
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あらすじ
「俺を信じて…君は俺の愛する女性だ」溺愛全開な御曹司の熱情に抗えず――創刊5周年マーマレード文庫初回分限定SSペーパー付き!
ハリウッド女優の専属シェフとして働く絵麻は、雇用主の母娘から嫌がらせを受けるが、老舗ホテルのCBO・神楽健斗の〝婚約者〟になることで救われ、彼が滞在するホテルで同居することに。一時の関係だと思っていたのに、健斗は絵麻を甘やかし始めて!?さらに情熱的なまでに愛を注いでくる健斗に、絵麻も彼への想いを自覚しながら酔わされていき…。
キャラクター紹介
堂本絵麻(どうもとえま)
海外セレブの専属シェフとして活躍するが、雇用主の我儘に振り回されている。
神楽健斗(かぐらけんと)
ビバリーヒルズにある最高級ホテルのCBO(ブランド責任者)で、ハリウッドにも顔が利く敏腕投資家。
試し読み
スイートルームにチャイムが鳴り、ちょうど立っていた私はドアへ弾んだ足取りで向かう。
「おかえりなさい」
姿を見せた健斗さんに笑顔になる。
「ただいま」
彼も顔を緩ませて、抱き寄せてくれる。俗に言うハグだ。
「ちょうど料理を運んでもらったところです」
手を繋ぎながらリビングルームに歩を進め、テーブルの上を目にした健斗さんはさらに見ようと近づく。
「おいしそうだな。着替える前に食べよう。手を洗ってくる」
健斗さんはペパーミントグリーン色のネクタイを緩ませ、洗面所へ入って行く。
普段は帰宅すると、スーツからラフな服装に着替えるのだが、待ちきれない様子に子供みたいだと思いつつうれしく感じる。
戻って来た彼はスーツのジャケットを脱いで隣の席に掛けると、腰を下ろした。
「お品書きを作ってみました!」
メニューをホテルのメモ用紙に書いて、お箸の隣に置いている。彼はそれを手にした。
「こんなにすごい料理は、なかなか家で食べられないだろう」
「そんなたいしたものではないですよ」
卯の花、だし巻き卵、キュウリとわかめの酢の物、青菜の煮びたし、ポテトサラダ、いか弁当がテーブルに並んでいる。
「温かいうちにどうぞ」
「ああ。いただきます」
健斗さんはお箸を持って、まず卯の花を口に入れる彼を見て私も食べ始める。
「いいね。懐かしいような、気持ちが安らぐような気分になる」
「すごい詩的な感想ですね」
「そう思ったんだ」
彼はそう言って笑って、だし巻き卵にも手をつける。
だし巻き卵には大根おろしも添えてある。
彼が食べるのを見守る。
こんな風においしそうに食べてもらっているのを見ると、幸せな気持ちになる。
「これも最高だ。それはそうと、調理場で邪険にされなかったか?」
「全然です。橋本料理長も優しくて。だし巻き卵はアドバイスをいただきました。だから最高の味になったのかと」
「アドバイスか。それは良かった。橋本料理長は銀座の老舗会席料理店で働いていたところを引き抜いたんだ」
「すごい人なんですね。そんな方にアドバイスをいただけるなんて光栄です」
次々と料理を食べ進め、食べやすいようにカットしたいか弁当を食べる。
「もうどうやって褒めればいいのかわからないよ」
「ふふっ、褒めなくていいんです。健斗さんが私の料理を食べてくれているだけで幸せになれますから」
「絵麻……」
彼は切れ長の目を大きくして、私を見つめる。
「どうしたんですか? 私、変なことを言って……?」
「いや、変なことなど言っていないよ。うれしかったんだ。俺も絵麻が笑っているだけで幸せな気持ちになる」
「笑うだけで?」
にっこり笑って見せると、健斗さんはなぜか苦笑いを浮かべながら頷く。
「今は食事に集中したいから、俺を煽らないでくれ。ずっと我慢しているんだから」
「煽……そんな……」
ずっと我慢って……。
急激に頬に熱が集まってくる。
「恋愛ど素人と公言する絵麻にははっきり言わないとな。俺は君を抱きたい。抱きたいと言ってもハグのことじゃない。君と愛し合いたい」
まっすぐ見つめられて心臓が暴れ始める。
「健斗さん……」
「だが、まだ体調は完璧ではないはずだから、無理はさせられない。俺は待つよ」
私の体を第一に考えてくれている健斗さんへの愛おしい思いが押し寄せてきて、その行き場が見つからない。
「……私は……、健斗さんに愛してもらいたいです」
そうしなければ、この思いは苦しさが増してきそうだった。
「絵麻……、いいのか?」
「はい。いつでもあなたに触れたいし……触れてほしい」
正直な気持ちを打ち明けて恥ずかしくなり目を伏せた。
すると、ガタンと椅子を引く音がして顔を上げると、健斗さんが横にいて座ったまま抱きしめられていた。
「可愛すぎて暴走しそうだ」
顎に長い指が掛かり上を向かされると、唇が重なって甘く食まれてから離れる。
「理性が壊れそうだ。まず俺のために作ってくれた料理を食べ終わらなければな。薬も食後だし。食事が済むまでなんとか理性を保つよ」
自嘲めいた笑みを浮かべた健斗さんは席に戻って残りの料理を口へ運ぶが、私の心臓は暴れすぎて食事どころじゃなかった。
食事が済み、スタッフに頼んでお皿を下げてもらったあとも、ずっと動揺していて気もそぞろになっていた。
健斗さんが動くたびに、ビクッと肩を跳ねらせている。
「絵麻、俺に抱かれるのには抵抗がある?」
「え? ないですっ。健斗さんに愛してもらいたいって言ったじゃないですか」
「じゃあ、なぜビクビクしている?」
目の前に立った彼は私の両頬を手で囲み、目と目を合わせてくる。
「……未知の世界なので……戸惑っているというか……」
すると、ふいに健斗さんは腰を屈めて、私の脚の裏に腕を差し入れて抱き上げた。
「きゃあっ!」
不安定な体勢に、慌てて彼の首に腕を回す。
私を抱き上げたまま健斗さんは歩き始め、メインバスルームの手前のパウダールームで下ろされた。
「もちろん、初体験だというのはわかっている。愛し合うのは気持ちいいと思ってもらいたい。戸惑う必要はないよ。俺に触れたいときは思うままに触れて」
健斗さんの顔がゆっくり近づき、唇にひんやりとした柔らかい感触が重なった。何度か角度を変えながら唇を弄ぶように動かされ、そのキスにどんどんのめり込んでいく。
唇を舌先でなぞられる。
「絵麻……、口を開けて」
食まれる唇を薄っすら開けると、舌が歯列を割って口腔内に侵入してくる。彼の舌は私の舌に絡んだり、吸ったりして、下腹部のあたりが疼き始める。
Tシャツの裾から入り込んだ大きな手のひらが肌を撫でていく。
彼に触れられるだけで、体の中が熱くなって疼くなんて、そんな感覚は初めてだ。
無意識で自分から健斗さんの舌に絡ませていた。
「そう、……したいと思ったことを、すればいいんだ……」
私の手は健斗さんの鍛えられた体を滑り、背中に回った。
「俺のワイシャツから脱がして。だんだんと羞恥心が薄れていく」
熱に浮かされたような感覚に襲われながら、彼の白いワイシャツのボタンをひとつずつ外していく。
その間も、情熱的なキスはやまない。
そのせいで下腹部の疼きは足にも影響を及ぼして、立っているのがやっとだ。
ワイシャツのボタンがすべて外れ、滑らかな胸から背中に手を滑らせると、キスを続ける健斗さんは熱っぽい吐息を漏らした。
そして唇から離れて、私のTシャツの裾から上に引き上げて脱がした。
ブラジャー姿を晒し、私の戸惑いもよそに、健斗さんはジーンズを脱がせていく。
「絵麻、俺のも脱がせて」
ブラジャーとショーツだけになって羞恥心に襲われながら、彼のスラックスに手をかけた。
健斗さんのボクサーパンツを穿いただけの姿に、なんて見事な肢体なのだろうと胸がさらに暴れる。
「何かスポーツを……?」
「クッ、絵麻の反応は面白いな。学生のときにサッカーをしていただけだ。今は健康のためにジムで体を動かすくらいだよ」
「スポーツ選手みたいです。とても綺麗で……」
「綺麗なのは絵麻だよ」
そう言って、ブラジャーのホックを外し、張りつめた胸のふくらみが露出する。
「あっ」
慌てて胸を隠そうと腕を動かすと、大きな手に阻まれた。
「本当に美しい。隠す必要などまったくないから」
再び唇が塞がれて、一糸まとわぬ姿になってバスルームへ連れて行かれた。
目のやり場に困って、健斗さんからバスルームへ視線を向ける。
初めて入るバスルームはとても広く、数人が入ってもゆったりと足が伸ばせる円形のバスタブに蛇口やところどころに金があしらわれていて、とてもゴージャスだった。
私が使っているシャワールームも同様にラグジュアリーだったが、こちらはバスタブがあって広い。
健斗さんは白い泡が湯船一面に広がるバブルバスに入り、私に手を差し出した。
その手を掴むと引き寄せられ、同時に身を沈めた。
きめの細かい泡で体が見えなくなってホッとする。
向かい合って座り私は胸が隠れているが、高身長の健斗さんの見事に引き締まった胸板が出ていて、否が応でも目に入る。
「顔が赤い。まだ湯船に入ったばかりだが?」
のぼせているわけではないのは、重々承知しているはずで、彼の瞳はからかいの色が浮かんでいる。
「余裕綽々ですね?」
「余裕があるように見せているだけで、実際は──」
健斗さんの腕に引き寄せられて、彼の足の上に乗せられる。そして、私の手のひらを自分の胸の上に当てた。
「わかるか? 早鐘を打っている」
「健斗さん……」
たしかに力強く鼓動が打ち鳴らしている。
「愛している」
愛の言葉を紡いだ唇は、私の鎖骨のあたりをちゅ、ちゅと吸いつき、赤い痕を残していく。