書籍詳細
離婚を切り出したら冷徹警視正が過保護な旦那様に豹変し、愛しいベビーを授かりました
あらすじ
「愛し尽くすから、そのつもりでいてくれ」仮面夫婦のはずが、とろ甘に抱かれご懐妊!?
憧れの警視正・澄晴とお見合いで結ばれた警視総監の娘・愛茉。けれど彼は終始素っ気ない態度で、結婚は出世のためだけと悟った愛茉はついに別れを切り出す。ところが、清楚な仮面を脱ぎ捨て素を曝け出したことで、澄晴との距離が急接近!?「愛茉とずっとこうしていたい」――澄晴から溺愛を注がれる愛茉は、彼との甘い子作り生活に突入して…!
キャラクター紹介
和倉愛茉(わくらえま)
警視総監の娘。武術にも長けているが、過去のある出来事がきっかけで、淑やかなお嬢様を演じている。
明城澄晴(あけしろすばる)
愛茉の見合い相手。警視正の位につき、捜査二課本部長に就任した。職場では冷徹と恐れられている。
試し読み
「愛茉さん、ドライブに行かないか?」
よく晴れた日の日曜日、澄晴さんは朝食を食べながらそう言った。
「行きたいですが、澄晴さんはお疲れなのでは……」
土曜日の昨日は同僚の勤務を代わって出勤だった澄晴さん。十九時には帰宅したけれど、澄晴さんは今日しかお休みがないのに大丈夫なのだろうか? それに仲直りしてから、私の我儘でお出かけに連れて行ってもらったばかりなのに……。
「愛茉さんは遠慮ばかりする」
「……遠慮してるわけじゃないけど、私のために澄晴さんに無理させてしまうのは嫌なんです」
彼は食事途中で部屋を出ていき、戻ってきた時には右手に長細い紙を二枚持っていた。
「実はこれ、遊園地の前売りチケットをもらったんだ。先に出せばよかったな」
「え? これって、あの遊園地のですよね?」
澄晴さんが手にしていた長細い紙は遊園地のフリーパスのチケットだった。利用期限は今月いっぱい。
「同僚が彼女に振られたとかで使えないから使ってくれ、と言われた。抜けられない用事ができたとかで土日の勤務を交代したりした時があったから、そのお礼だって。昨日もその一日だな。しかも期限もあんまりないし。サプライズで行くのもいいかな? と考えていたのだが失敗だったな」
私が澄晴さんのためにと思ったことが逆効果だった。澄晴さんのサプライズしたい気持ちを壊してしまって馬鹿な私。
「ごめんなさい、せっかく澄晴さんが計画してくれたのに雰囲気を壊してしまって」
「そんなことないよ。俺が下手くそなだけだから」
ぺたっ。私は澄晴さんに抱き着く。
澄晴さんは何も言わずに抱きしめ返してくれる。
「澄晴さんと一緒に遊園地行きたいです」
「……うん」
澄晴さんの温もりが大好き。
私は洗濯物を干し、澄晴さんは食器の片付けを手伝ってくれた。掃除は昨日したので割愛して、身支度を整えることにする。
澄晴さんとのお出かけはオシャレして出かけたいので、メイクも髪型も通常よりも時間がかかる。肩より少しだけ下の長さの髪の毛を顔周りに後れ毛として適量残し、サイドは編み込みにして、後ろ髪は束ねて捻ってからアップにする。
身支度を整えて、お気に入りのバッグを持っていざ出発!
澄晴さんは首都高速に乗り、都内を抜け出して隣の県まで向かった。
遊園地なんて、いつぶりだろうか?
日曜日の秋晴れの日、子供連れや彼氏彼女のペアなど沢山の人達で賑わっていた。
大学時代に友達と遊びに来たことがある。入園無料の遊園地で観覧車のイルミネーションが物凄く綺麗なんだよね。
それに観覧車の真上でキスすると永遠の愛になると噂で聞いたことがある。きっと、そんなことは澄晴さんは知らないだろうけれど。
「澄晴さんはジェットコースターとかの絶叫系は平気ですか?」
「それなりに。愛茉さんは苦手?」
「私? 私は大好きです」
わくわくする。小学生高学年の頃に母と兄と一緒に行った遊園地で、連続三回ジェットコースターに乗ろうとしたら兄に気持ち悪くなるからと止められたくらいに大好き。
父はアウトドアには連れて行ってくれたが、遊園地などは好きではないためにほぼ一緒に行った記憶はない。
母は兄と私の付き添いで来て、ずっと日陰のベンチに座っていた気がする。私のジェットコースター好きには兄も呆れる始末。
『ハンドル握ったらスピード狂になりそうだから、運転免許は取らせない方がいい』と兄が父に垂れ込み、父が鵜呑みにしたために私は教習所には通ったことがない。
最初は私の希望で、二人でジェットコースターに乗った。
「水しぶきが凄かったけど、そんなに怖くなかったですね」
「……俺は急降下でドキドキしたけどね」
急降下のままで水面直下して下のレールにすり抜けていくというジェットコースターは、澄晴さんには少し怖かったみたいだ。
ケロッとしている私に対して、澄晴さんは信じられないという顔をしている。最初に選ぶ乗り物ではなかったかな?
気を取り直し、次は何にしようかな? と迷う。
「次はゆっくり系がいいですか?」
「そうだなぁ、メリーゴーランドは?」
「はい、メリーゴーランドにしましょう」
メリーゴーランドはお馬さんではなく、馬車に二人で乗る。回転がゆっくりなので、座っていられて会話も景色も楽しめる。
澄晴さんは嫌々だったけれど、手を伸ばして自撮りをする。写真の中の無愛想な澄晴さんも相変わらず格好よくて待ち受けにしたいくらい。
「見て下さい、この写真。澄晴さんが素敵です。待ち受けにしてもいいですか?」
「……。それはちょっと無理」
メリーゴーランドから降りた後、澄晴さんに確認したけれど、考えた挙げ句に待ち受けは却下された。削除してほしいと言われないだけよかったと思うしかないかな?
「次は……お化け屋敷どうですか? 歩く系と歩かない系」
「……歩かない系」
「分かりました、歩かない系はこっちですね。澄晴さんはお化け平気ですか?」
「お化け? ……作り物だから大丈夫」
一瞬、返事に間があったかのような気がしたけれど、きっと気のせいだろう。
「じゃあ、怖さレベルマックスにしましょう」
絶叫系はジェットコースターに続き、お化け屋敷も平気な私。
歩かない系の乗り物に乗って行くお化け屋敷は怖さが選べるタイプらしく、怖さが一から三まであるが三にした。
澄晴さんはお仕事でもっと怖いものを見ていると思うので、お化けなんてきっと、どうってことはないはずだ。
「……きもちわる」
澄晴さんは平気だと言っていたが、いざ乗り物に乗り込むとお化け屋敷の音声が気持ち悪いと耳を塞いでいる。私は作り物だって分かっているし、全然怖くないんだけれども。
「あー、寒気はするし、気持ち悪くなった」
お化け屋敷から出た澄晴さんは何となく足元がふらついているような気がする。
「お化け屋敷、駄目でしたか?」
「音がとにかく気持ち悪い。ギィギィうるさいし、薄暗いのも気持ち悪かった」
澄晴さんが滅入ってしまったので、一旦、休憩することにした。私は澄晴さんに椅子に座っててもらい、お昼ご飯を買いに行く。
澄晴さんにはホットドッグ、ポテトとコーヒー、私はバナナ生クリームのクレープとアイスティーにした。
「ありがとう。実はお化け屋敷って昔から音が駄目で嫌いだった」
ボソボソと呟くように私に伝えて、椅子に座ってテーブルで項垂れている。
「それなら、遠慮なく言ってくれたらよかったのに」
「そうなんだけど……、大人の男がお化け屋敷怖いだなんて愛茉さんに知られたくなかったから何も言えなかった」
誰にでも苦手な物はあるのだから気にしなくていいのに。
「俺は愛茉さんによく思われようと必死なんだ。格好悪いだろ? 必死過ぎて」
「そんなことないです。兄も澄晴さんと一緒で怖い漫画とか小説は平気なのに、映画のホラー系は音が駄目なんですよ。怖さの体感が音に集中してしまうんでしょうね、きっと」
誰にでも苦手な物はあるのだから、気にする必要はない。
私に興味がなかった澄晴さんがどんどん変わっていく。よく思われたくて必死だなんて、聞いただけで舞い上がってしまう。
「愛茉さん、何でニヤニヤしてるの? やっぱり格好悪いと思ってるんだろ?」
コーヒーを飲みながら私を横目でチラッと見ながら澄晴さんは言った。
「ち、違いますよ! 澄晴さんが私のことを考えてくれているのが嬉しくて、つい……」
澄晴さんが勘違いをしているので私は必死で否定する。すると澄晴さんは私から視線を外して、顔を右の手の平で隠した。
「愛茉さんは俺をからかうのが上手だな」
「違います、からかっ……」
途中まで言いかけた言葉を呑み込む。澄晴さんは照れくさいのか、ほんのりと顔が赤い。
歳が七つも離れていて兄よりも年上だが、大人の男性が照れている姿はとても可愛らしく思ってしまう。
距離を少しずつ縮めている私達は初々しい学生のようだ。このまま少しずつ、澄晴さんのことを知っていきたい。
軽食を済ませた後は澄晴さんと相談しながら、いくつかアトラクションに乗る。
澄晴さんとの遊園地デートが時間を忘れるくらいに物凄く楽しい。年甲斐もなく子供のようにはしゃいでしまう。
薄暗くなってきたところで最後にとっておいた観覧車に乗ることにした。
「観覧車のイルミネーションが点灯しましたね。暗くなるともっと綺麗かなぁ」
観覧車を見上げるとイルミネーションが色鮮やかで吸い込まれそう。学生時代はこの遊園地に夜まで居たことがなかったので、こんなに綺麗に灯されている観覧車は初めて見た。
「もしかしたら夜景も見られるかもしれないな。そうだ、近くのお店で夕食を済ませてから来ようか?」
有無を言わせないとばかりに澄晴さんに手を引かれて、遊園地から僅かな距離のレストランに連れてこられた。
「ここさ、駐車場から歩いてくる時に見てよさそうと思ってたんだ。勝手に決めてしまったけど、どうかな?」
白を基調とした建物に緑の屋根とドアが印象的なお店。ボタニカルをイメージしているのか、お店の周りにも手入れされている可愛いミニ薔薇や観葉植物が植えられていた。
テラス席の数も多く、ざっと見た限りでは二十席はありそう。テラス席からは海と夜景を見渡せるようだ。
「素敵ですね。是非、行ってみたいです」
「では、決まりということで」
レストランの中に足を踏み入れると観葉植物が至るところにオシャレ且つ主張し過ぎない程度に飾られていて、癒やしの空間になりそうな素敵な場所だった。
「愛茉さんが好きな感じのお店かな、って思って」
「はい、とても私の好みです。連れてきてくれてありがとうございます」
澄晴さんには私が好きな雰囲気のお店が分かるらしい。結婚前に行ったデートの時に、落ち着ける雰囲気のオシャレなカフェに行ったりするのが好きだとそれとなく言ったからかな?
コース料理もあるらしいが少し前に食べたばかりだったので、魚料理とサラダとバゲットのセットにする。ドリンクは食後にコーヒーと紅茶をオーダーした。
魚料理は鯛のポワレ、レモンバターソース。それから鶏ハムが添えてあるバルサミコ酢ベースのドレッシングがかけてあるサラダ。
バゲットはお代わり自由らしく、澄晴さんはお代わりをした。
カジュアルフレンチレストランなので気取らずに楽しめるのが嬉しい。
以前、澄晴さんが連れて行ってくれた稲澤さんのお店も結構美味しかったけれど、ここのお店も美味しい。
「思いがけず、美味しいレストランに出会えて幸せです」
「そうだな。また二人で色んな店に行こうな」
「はい、楽しみにしてます」
食後の一杯を飲みながら料理の余韻に浸る。
澄晴さんと一緒に過ごせる喜びが心を満たしていく。
食事を済ませた後は遊園地に戻り、お目当ての観覧車へと向かう。辺りは暗くなり、観覧車はライトアップされてより一層煌めいていた。
何組か並んでいたが割とスムーズに乗ることができ、観覧車から見える景色を楽しむ。
「遊園地全体がキラキラに輝いていて綺麗ですね。海も見えるし、最後に観覧車に乗れてよかったです」
「愛茉さんに喜んでもらえると俺も嬉しい」
対面するように座席に座っていた私達だったが、窓の外を眺めているうちに澄晴さんが私の方に移動してきた。
観覧車がほんの僅かだが、重心が傾いた気がする。落ちはしないのは分かってはいるが、澄晴さんの腕を思わず掴んでしまう。
「ご、ごめんなさい!」
私は咄嗟に澄晴さんの腕から手を離す。
「いや、俺が急に移動したのが悪い。ごめん」
澄晴さんはそう言って私の肩をそっと抱き寄せた。ふと彼の方を見上げると目が合い、視線が外せなくなる。
「……いつの間にか、愛茉さんは特別な女性になっていた。結婚当初は好きにならないと決めつけていたくせに、今はこんなにも愛しい」
「澄晴さん……」
「好きだよ、愛茉」
初めて呼び捨てで呼ばれた。結婚当初に、あんなにも胸を締め付けられるような切なくて苦しい思いをしたのだが、目の前に居る澄晴さんは私だけを真っ直ぐに見てくれている。私も澄晴さんが好き。
胸が高まっていくと同時に愛を囁かれ、口付けを交わす。気付けば、観覧車は頂上付近まで来ていた。
「澄晴さん、観覧車の頂上でキスをすると幸せになれるとか絶対に別れないってジンクスがあるんですよ。知ってま……」
私は照れくさいので、そんなジンクスを澄晴さんに話そうとしたのだが……。
「今が頂上だろ? 一回目はフライングだったから、今度は大丈夫。ちゃんと頂上だった」
不意打ちにも二回目の口付けをされた。何となく話したジンクスを澄晴さんは鵜呑みにしたのか、行動に驚かされる。
澄晴さんは唇を離した後に半開きの口で自分の唇の端を舐めた。
その表情と仕草を見た私は色気を振りまく澄晴さんにドキッとして、目が離せなくなる。
「あっという間にもう地上だな。どうした? あんなキスじゃ物足りなかったか?」
私が澄晴さんを見つめていたことを気付かれ、クスクスと笑われた。左右に首を振り否定する。
観覧車に乗っていた、たった十五分の間に澄晴さんに翻弄された私。
これから先も、もっと好きになってしまうことが確定した。
「愛茉、どうぞ」
一度呼んだら呼び捨てなのだとしみじみ思って感動してしまう。呼び捨てで呼ばれるだけで特別感が増す。
澄晴さんは観覧車から降りる時も先に降りて、私の手を取って降りる時にエスコートしてくれた。甘くて過保護な王子様である。
駐車場まで歩いて向かっている時も、観覧車から降りる時に繋いだ手を離さなかった。
まるで夢の中に居たみたいに幸せな気分のまま、帰路につく。
今日一日の出来事を振り返っては思い出す。一番の思い出はやはり、観覧車。
私達はジンクス通りに絶対に別れないし、幸せになる。強い信念を持ち、お互いを支え合える関係になればきっと大丈夫。
遊園地デートから数日後、澄晴さんから帰宅が遅くなると連絡があった。
澄晴さんの食事をテーブルに置き、先にと入浴を済ませる。明日も仕事だし、朝食とお弁当も作るため、澄晴さんには申し訳ないが先にベッドに入ることにした。
「あれ……? 澄晴さん?」
「ごめん、起こしちゃったよな」
先に寝ていた私のベッドに澄晴さんが潜り込んできた。私は眠っていたのだが、澄晴さんの気配を感じてうっすらと目を開く。
「おかえりなさい」
「ただいま」
私は澄晴さんが帰ってきたことが嬉しくて眠気も吹き飛んでしまい、咄嗟に彼に抱き着く。澄晴さんは私の額にキスをくれる。
帰りが遅い時は先に寝ている私のベッドに潜り込み、隣に寝ているのが恒例となりつつある。
私達は穏やかな日々を過ごしているが、大人の関係ではなく、少しずつ歩み寄って恋人同士を楽しんでいる感じ。寝る前のおやすみのキスも毎日の日課である。
「もっと遅くなるかと思いました」
「何とか一山片付いたから、今日は帰ってきた。愛茉に早く会いたかったし」
「私も朝になる前に澄晴さんに会えてよかった」
澄晴さんは私の背中に手を回して、そっと抱きしめる。
「愛茉、まだ起きてる?」
「……はい、起きてますよ」
「本当は明日言おうと思ってたんだけど、やっぱり今から言いたい。近いうちにまとまった休みをもらうから旅行に行かないか?」
「旅行……! 勿論行きたいです!」
一瞬で気持ちが舞い上がる。澄晴さんの口から思いもよらない言葉が飛び出したので、胸に顔を埋めて寝ようとしていた私は思い切り上を向いてしまった。
「……い、た」
頭が澄晴さんの顎にぶつかり、頭突きをしたみたいになってしまう。勢いよくぶつかったので私自身も頭が痛い。
「ご、ごめんなさい! 舌噛んだりしてないですか? 痛かったですよね? 大丈夫?」
私は慌てて、澄晴さんの顎を撫でる。
「大丈夫だよ。それよりも愛茉の方が痛かったんじゃないの?」
痛かったはずなのに、何故か澄晴さんは私の頭を撫でながら笑っている。
「痛いけど、澄晴さんの方がもっと痛かったと思うから。本当にごめんなさい」
「謝らなくていいよ。愛茉とこんな風に自然と会話したりすることが嬉しいから。でも、愛茉が気にしているならば……」
「……?」
「愛茉がキスしてくれたら治るよ、きっと」
保安灯しかついていない部屋の中でも澄晴さんと目と目が合うのはドキドキする。冗談交じりに言った澄晴さんは私の顔をじいっと眺めている。
「目を瞑って下さいね」
どうぞ、と言わんばかりに目を閉じた澄晴さんにそっとキスをする。心拍数が上がっているようで鼓動が速い。自分からキスをするなんて緊張もするし恥ずかしかった。
「まだ……足りないんだけどな」
軽く触れ合うだけのキスを交わした後、澄晴さんから後頭部を押さえられてキスをされる。半開きになった口から舌を入れられ、今までに経験をしたことのない荒々しい口付けだった。
「……はぁっ」
「愛茉、可愛過ぎ」
蕩けるくらいに濃厚なキスは私の身体を火照らせる。
まともに澄晴さんの顔が見られない。薄暗いので顔色までは澄晴さんに分からないだろうけれど、私の顔はきっと真っ赤に違いない。
「……旅行の計画は明日以降に決めよう。日付が変わってしまうから、今日はもう寝ようか」
私は何も言わずに澄晴さんに抱き着いて寝ることにした。いきなりのあのキスは何だったのだろう?
そのまま眠りにつこうとしている澄晴さんの温もりが心地いい。すやすやと寝息をたてて先に寝てしまった澄晴さんを確認してから、再び目を閉じる。
キスはしてくれるけれど、その先はまだなんだよね……。そんなことを考えながら、夢の世界へと入り込んだ。