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マーマレード文庫&マーマレードコミックス > 記事 > マーマレード文庫 > 期間限定の契約妻ですが、敏腕社長の激愛で身ごもりました

書籍詳細

  • マーマレード文庫

期間限定の契約妻ですが、敏腕社長の激愛で身ごもりました

  • マーマレード文庫
  • 著者: ひなの琴莉
  • 表紙イラスト: 芦原モカ
  • ISBN:978-4-596-52942-8
  • ページ数:320
  • 発売日:2023年11月10日
  • 定価:650+税

キーワード

  • CEO・社長
  • 妊娠・身ごもり
  • 幼なじみ
  • 契約結婚
書籍
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電子書籍
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あらすじ

「きみがいないと生きていけない」偽装結婚だったのに溺愛されて子供も授かって…!?
ブライダルプランナーの美佐子は、社長の恭平に頼まれ結婚式場のプロモのため彼と契約結婚した。初恋の人との生活に喜びを感じていたが、突然彼の義妹に偽装結婚だと暴露されてしまう。大事な取引先の信用を失わぬために熱愛夫婦を演じるうち二人の仲は急接近。片思いだと思っていた恭平から甘い熱情を注がれる美佐子は、ついに赤ちゃんを授かり…!?

キャラクター紹介

市原美佐子(いちはらみさこ)

会社のために初恋相手で社長の恭平と契約結婚した。結婚前はブライダルプランナー。一途でしっかり者。

市原恭平(いちはらきょうへい)

大手ブライダル企業の社長で御曹司。有名デザイナーとの契約の条件で結婚しなければならなくなり、相手を探していた。

試し読み

 美佐子のことを好きになってしまい、恋人になりたいと願う一方、歳の差が十歳もあり、彼女からすれば自分はおじさんだ。
 大学時代という華々しい時間を俺が無駄にさせてしまうのは申し訳ない気もした。
 俺が真剣な気持ちを伝えたら美佐子はやさしいからきっと恋人になってくれていただろう。
 大切に思うからこそ身を引いてしまったのだ。
 あの日から俺と美佐子の距離感が広がった。

 気がつけばプライベートで会うことはなく、会社の社長と社員という関係になっていた。
 それ以降、美佐子は敬語で話すようになった。
 おそらくあの日、完全に嫌われたのだ。

 そのまま数年過ぎ……。
 自分の中でだんだんと彼女への想いが深くなり、どうすればいいのか困惑していた。
 ところが業務過多で毎日倒れるように眠る日々。
 その上、父親の代で多額の融資をしていた会社の経営破綻が明らかになり、企業として大ピンチを迎えていた。
 恋とか愛とか、そういうことも忘れ必死で働き続けた。
 そしてやっと大企業と業務提携することができたのだ。それが“DDD&M”だった。
 ところが『自分の結婚式を使ってプロモーションするなら協力する』と言われ俺は頭を抱えてしまった。
 結婚するなら美佐子しかいない。しかし、あんなに穏やかでいい子にこんな重たいことを頼んでもいいのだろうか。
 そもそも俺は美佐子に嫌われている。結婚してほしいと伝えても絶対に断られてしまうだろう。
 それならなんとか彼女を手に入れたい。大人の男の邪な思考が渦巻いた。
 ずるい手を使ったと思われてしまうかもしれないが、会社が困っていることを伝え美佐子のやさしさに付け込んで結婚のお願いをすることにした。
 もしこの作戦がうまくいって夫婦になることができたら、いつか自分に恋をしてもらえるよう、本気で落としていくしかない。
 そして作戦を決行。美佐子は迷いながらも同意してくれた。冷静な表情を浮かべていたが立ち上がり雄叫びを上げたいくらい嬉しかった。
 ただ、契約金の話をして期間限定と言ってしまって、取り返しのつかないことをしたと後悔の念も強い。
 でも必ず会社を立て直す。そして美佐子を心から大切にして二年間の契約の間に振り向かせたい。そう自分の中で密かに決意していた。
 しかし、いずみがしてしまった発言で大変な事態に巻き込んでしまった。
 眠っている彼女の頬にそっと手を添えて顔を見つめる。
(絶対に幸せにするから)
 心で強く誓った。
 美佐子が瞼を揺らした。慌てて離れる。
 ゆっくりと瞼を開けた彼女は、ぼんやりと視線を彷徨わせてから俺に目を向けてふにゃっと笑った。
(かわいすぎるだろ)
 不意打ちすぎて鼻血が出そうだ。
「寝ちゃってた……」
「寝ててもいいと言っただろ?」
「そんなわけにはいかないよ。でも寝てたら同じことだよね」
 苦笑いしている。健気なところも俺が好きになってしまうポイントなのだ。
「美佐子、今週末はどうしたいか決めたか?」
「まだ……なかなか決められなくて」
「せっかく春を迎えたから、花が美しいところで食事をして散策でもしないか?」
「素敵!」
 素直に喜んでくれている姿を見ると胸の奥が強く締めつけられる。
 このまま彼女のことを抱きしめたい衝動に駆られたが、過去に一度失敗しているので、ここは堪えどころだ。
「もう四月も終わってしまうが、これからが様々な花が咲くそうだから」
 スマホを取り出して目的の日本庭園があるホテルを見せた。美佐子が顔を近づけて覗いてくる。
 近距離に来ると彼女の持っている天然の甘い香りが鼻の中を通り抜けた。
 手を伸ばせば届くところにいるのに、契約違反になってしまう。焦るな、俺。
 両想いでないのが悔しくてたまらない。
「楽しみ」
「予約しておく」
「ありがとう、恭平さん」
 穏やかな時間が流れていた。大変な問題など今は忘れるほど幸せだった。

          ◆

 デート当日の朝を迎え、軽く朝食を済ませると私は外出する準備をはじめた。
 楽しみなのとパパラッチに後をつけられるのではないかという不安とで、ほとんど眠ることができなかった。
 普段は親密ではないのでちゃんと信じてもらえるのか。今日はできる限りのことを頑張ってこよう。
 隣を歩いても恥ずかしくないようにおしゃれをしなきゃ。派手すぎず地味すぎないように。
 恭平さんが前に買ってくれたうぐいす色のワンピースを着て、髪の毛はハーフアップにしてメイクを入念にした。大きすぎる目が子供っぽく見えないようにいつもより大人っぽくアイラインを引いた。
 鏡を何度も見ながらチェックを重ねる。
「これで大丈夫かな……」
 準備を終えてリビングルームに行くと、カジュアルにジャケットを羽織った恭平さんと目があった。
 仕事でのスーツ姿も素敵だが、休日のお出かけファッションも似合っていて思わずフリーズしてしまう。
 雑誌に掲載されているスーパーモデルみたいだ。
 目のやり場に困って、酸素を吸い込むのも忘れてしまった。
 固まっている私に近づいてきた恭平さんが柔らかな笑みを浮かべてくれた。
 もっと美人だったらよかったのにと不安が押し寄せる。
「とても似合っている」
「え、あ、ありがとう……!」
 まさか褒められると思わずに声が震える。
 その上二人きりのシチュエーションでタメ口で話すのは、やっぱり緊張してうまく言葉が出てこない。
 でも慣れておかないと、外出先で目撃されたときに違和感を覚えられたら困る。
「じゃあ行こうか」
「うん」
 実を言うと結婚してから夫婦で食事に行くのがはじめてだった。というか人生はじめて父以外の男性と二人きりで外出する。
 エレベーターに乗るとさりげなく恭平さんは私の手を握ってきた。いきなりのことでびっくりして横を見ると、彼は余裕な表情だ。
「仲がいいことをアピールしなければいけないんだから仕方がない」
「そうだよね」
 いちいちドキドキしていたら、心臓が持たないだろう。
 マンションを出ると、パパラッチがカメラを向けてくる。待ち構えているというのは予想していたけれど、実際にシャッターを切る音を聞くと嫌な気持ちが押し寄せてきた。
 運転手が扉を開いて待機していたので、素早く後部座席に乗り込んだ。車が走り出すと加速していた心臓の鼓動が少しずつ落ち着いてきた。
 正直いつまでこのような状況が続くのだろうと思うけれど、一緒に戦うと決めたのだから頑張るしかない。
 私は膝の上でぎゅっと握りこぶしを作った。
 隣に座っている恭平さんは窓の外を見て小さなため息をついている。
 恭平さんは、代表取締役社長という立場なのでほとんど自分で運転をしない。万が一事故に遭ったら、指揮を執る人がいなくなる。
 とは言っても運転するのは嫌いではないそうなので、たまには自分でドライブをしたいと話をしていた。
「いつまで写真を撮り続けるんだろうな」
「うん……」
 運転手には聞こえないように小さな声で話しながら私たちは車に揺られていた。
 ホテルに到着すると従業員がすぐに迎えにやってくる。日本庭園がある有名なところで私もテレビで要人が宿泊したと見たことがあった。
 足音を吸い込む絨毯が敷き詰められていて、老舗ながらも丁寧に掃除が行き届いている。重厚感のある内装に私の心は躍っていた。
 それと同時にこういうところにはほとんど来たことがなくて、それらしく振る舞えるか恐怖心もあった。
 予約してくれていたのは、鉄板焼レストランだ。
 カウンター席に案内されて、目の前でシェフが焼いてくれるスタイル。
 窓の外には日本庭園が広がっていて、店内は庭園を見やすくするために、少し暗めの照明である。
 恭平さんは社長の息子ということもあり、こういうところに来るのは慣れているのかもしれないけど、私はごく一般家庭の出身だ。こんな高級なレストランには誕生日くらいしか来たことがない。いや、誕生日でもほぼない。成人のお祝いで連れてきてくれたくらいだ。
 しかしどこで誰が見ているかわからないので、慣れている風な感じを出さなければ。
「市原様、ご来店ありがとうございます」
 恭しくシェフが頭を下げてきた。
「飲み物は料理に合わせて出してくれますか?」
「かしこまりました」
 すぐに芳醇な香りのする白ワインが運ばれてきて乾杯した。
 白ぶどうの甘みが広がってすごく大人の味だ。スッキリしていてすごく口当たりがよくグイグイ呑むとすぐに酔っ払ってしまいそう。
 まずは前菜が運ばれてきた。湯葉の上にウニが乗せられていて、口の中に入れるととろけてしまいそうだ。
 あまりにも美味しくて思わず大きく反応してしまいそうだったが、普段から食べているような感じにしなければ誰が見ているかわからない。仲よしアピールにはならないのだ。
「甘くて美味しい」
「あぁ」
 彼は余裕な雰囲気だ。
 次に海鮮物が鉄板の上に用意された。
「本日は北海道産ホタテのバター焼きと伊勢海老でございます」
 シェフは丁寧に食材の説明をしてくれる。北海道産と聞くだけで鮮度がよくてとても美味しそうだ。
 焼き上がるとシェフが食べやすいように一口大にカットしてくれる。とても切れ味のいいナイフだなと感心してしまった。
「どうぞ」
 一口目は岩塩で。二口目はホテル特製のポン酢ソース。三口目はガーリックソース。どれも美味しくて頬が落ちそうになった。
 メインの松坂牛のフィレステーキは、赤みと上質な脂身のバランスがとてもよく、口の中に入れるとバターが溶けていくような感じがした。
 こんな美味しいお肉を食べたら忘れられなくなってしまいそうだ。そして赤ワインを一口呑む。
(お肉とワインってこんなに組み合わせがいいんだ!)
 食べることが好きになってどんどんぽっちゃりしていくかもしれない。そんなことを思いながら口に入れていた。
「美佐子、どう?」
「たまらないわね」
 どことなくセレブっぽい喋り方を頑張る自分が笑える。
 恭平さんは私が無理をしていることに気づいているようで、微妙な笑顔を浮かべていた。
 最後に鉄板焼レストランということでお好み焼きが用意される。これもまた上品で、今まで口にしたことがないような味だった。
 デザートは繊細に盛りつけられた季節のフルーツとホテル自家製シャーベット。それに焙煎されたホテル自慢のブレンドコーヒー。
 お腹いっぱいになり大満足だ。
 食事を終えた私たちは、庭園を散歩することにした。
 レストランを出て歩き出すと、恭平さんは自然と私の手をつかんだ。思わず引っ込めようとしたが、私たちは本当の夫婦だとアピールしなければならない。
 こんなことでいちいち挙動不審になっていては、世間に偽装結婚ではなかったと信じてもらえないのだ。
 彼の手は大きくて私の手を包み込んでくれる。
(男らしい手……)
 本当は指を絡ませてたほうが親密に見えるかもしれないけれど、こうして手をつなぐだけでも精一杯だった。
(心臓が爆発しそう)
 ずっと幼い頃から憧れていた人と夫婦としてデートをしている。これが契約結婚でなければ幸せだったのにと切ない気持ちに支配された。
 そんな気持ちを吹き飛ばすかのように、目に飛び込んできたのは大きな滝だ。東京の中心地だというのにこんなに立派な滝が見られるとは思わなかった。
「迫力があるね」
「あぁ。見事だ。世界中には魅力があるところがいっぱいある。時間を見つけて旅行したいな」
「うん、いろいろ見てみたい……ね」
 本心で言っているかわからないので、曖昧な返事をしてしまった。
 私たちの会話を記事にしてしまわれないかと不安な気持ちに襲われる。
 思わず周りをキョロキョロと見たがそれらしき人はいなかった。
 四月下旬になっていて庭園にはツツジやサツキが咲いていた。
 花びらはフリルのようにかわいくて中心部が色濃く周りは薄いピンク色。とても美しい花だった。
 もう少しゆっくり進んでいくと、ハナミズキがある。花を見ると繊細なその姿に心が奪われていた。
 視線を感じて横を向くと恭平さんがこちらをずっと見つめている。
 なにか顔についているかと思って瞳を泳がせた。
「なに?」
「楽しそうだなと思って。朝は緊張しているようだったから」
 偽装デートなのに、思わず楽しんでしまっている自分がいてハッとした。
「ごめんなさい」
「謝ることないさ。楽しんでくれたらそれはいいことだから」
“恭平さんは楽しい?”
 聞いてみたかったけれど、そんなはずはない。
 会社がどうなるかそのことで頭がいっぱいになっているはず。私とのデートを楽しんでいる場合ではないのだ。
 聞きたかったことは口にせずに笑顔を浮かべた。
 悲しそうな顔に見られないように精一杯口角を上げて……。

 私たちは花を見ながら会話をし、夕方になる頃に家に戻ってきた。
 美味しいものを食べて素敵な景色を見て楽しいひとときだったのに、虚しさに襲われる。
 恭平さんは家に戻ってきたらすぐに部屋にこもって仕事をはじめてしまった。忙しいのに無理をして今日の時間を作ってくれたのだ。
 私が夫婦円満アピールをしようと提案したせいで彼に負担をかけてしまっている。申し訳ないことをしてしまった。だんだんと重苦しい気分になっていく。
 あまりにも幸せな時間だったから空虚感がものすごく強い。
 同じ空間にいるのに、世界中にたった一人取り残されたような心細い気持ちになって、思わずため息をついた。
 幼い頃から楽しい時間のあとは、その反動で気持ちが落ち込む日が多かった。性格的な問題なのかもしれない。
(もし期間限定の結婚じゃなくて、これが永遠に続くとの誓いの下の結婚だったらまた違ったのかな)
 いつまでも落ち込んでいられない。
 気持ちを切り替えて夕食の準備をしようと立ち上がった。


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