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マーマレード文庫&マーマレードコミックス > 記事 > マーマレード文庫 > 極甘一途なかりそめ婚~私にだけ塩対応の天才外科医が熱愛旦那様になりました~

書籍詳細

  • マーマレード文庫

極甘一途なかりそめ婚~私にだけ塩対応の天才外科医が熱愛旦那様になりました~

  • マーマレード文庫
  • 著者: 望月沙菜
  • 表紙イラスト: 幸村佳苗
  • ISBN:978-4-596-96126-6
  • ページ数:320
  • 発売日:2024年7月8日
  • 定価:650+税

キーワード

  • 医者
  • 薄幸
  • クール
  • 契約結婚
書籍
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電子書籍
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あらすじ

「一生離さないから覚悟しろ」S系ドクターは癒し系ナースに最愛を注ぐ――
家族の借金を返すため、健気に働く看護師・唯。ある事情で高級クラブのホステスを務めた際、なぜか自分にだけ冷たい外科医・廉斗と遭遇してしまう。慌てる唯に、彼は借金の肩代わりにと結婚を提案し…!?しかも、かりそめの新婚生活では、ただの契約婚のはずが、廉斗が予想外の甘さを見せ始める。止まらない愛に蕩けた唯は、身も心も彼に捧げて…。

キャラクター紹介

田辺 唯(たなべゆい)

借金を抱えながらも健気に働く看護師。誰とでも親しくできるが廉斗だけは苦手。

宇喜田廉斗(うきたれんと)

いつも笑顔でそつなく仕事をこなす、次期院長候補のエリート外科医。職場で唯にだけ冷たい。

試し読み

「ナナ、いい子にしていたか?」
「お帰りなさい」
「ただいま」
「もうご飯ができるので」
「ありがとう」
 先生はナナを抱っこすると、ソファに座った。
 そしてナナを自分のほうに向かせると、ナナは先生の鼻をぺろっと舐めた。
 舐められたほうの先生は、本当に嬉しそうに微笑み、
「お前は本当に可愛いな」
 と言ってナナにちゅっとキスをする。
 これが先生とナナのルーティーンみたいなもので、微笑ましい光景なんだけど、なんというか、私はかや蚊帳の外?
 ――ナナにはキスするのに私にはしないのね。
 という思いがふと頭によぎっては、それをかきけ消す。
 先生のことは嫌いじゃない。
 結婚してから仕事中の私に対する態度にも変化があった。声のトーンが少し柔らかくなり、視線の鋭さもなくなった。
 といっても、好きかと聞かれたら好きと言うほど先生のことを知らない。
 今まで抱いていたような負の感情はなくなっていた。
 ただそれがイコール好きかというと、まだ違うような気がする。
 そんなことを思いながら夕飯の支度をしている時だった。
「唯」
 ふと名前を呼ばれた。
「はい」
「今度の土曜日は休みだな」
「……はい」
 結婚してから先生と休みが重なることが増えた。
 師長がシフトを決めているのだが、おそらく気を利かせて休みを調整しているのだろう。
「ナナを連れてドライブにでも行かないか?」
 突然の申し出に私は驚き固まった。
「もしかして何か用事でも――」
「いえ、ないです。ちょっと驚いただけで……」
 先生はクスッと笑った。
 職場では見せないような、こんな笑顔を向けられると、いつも戸惑う。
「単にリフレッシュしたいだけなんだけどね」
 リフレッシュか……。
 確かに新生活が始まった頃はなんやかんやとやることがあって、ゆっくりした休日はほとんどなかった。
「そうですね」
「それに、ナナを広いドッグランに連れて行きたいんだ」
 ――メインはそっちなんだ……。
 でもナナと一緒だったらドライブも無言にはならなさそうだし、いいかも。
「じゃあ、お弁当作りましょうか?」
 ナナが一緒だと、ご飯を食べるにしても入れるお店を探すのが大変だと思い、提案したのだけど、
「本当に?」
 先生は本当に嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
「犬の入れるお店って少ないじゃないですか。だから……」
「そうだったな。そうか、お弁当持って……ナナ、よかったな。みんなでお出かけできるよ」
 そういって先生はナナをギュッと抱きしめた。
 その姿を見た瞬間、胸がドキッと強い音を立て、顔が熱くなった。
――いけない! カッコカワイイかも。
 そう思った自分に自分で驚いていた。
「ハ、ハードルを上げるような強い期待はしないでくださいね」
「唯が作るものならなんでもいい。ね〜ナナ」
 ナナに言ってるのはわかるけど、そこまで喜んでくれるとは思わなかった。
 それにしても二人で(ワンコもいるけど)お出かけは初めてかもしれない。
 そう思うと、ちょっとドキドキしてきた。

 お出かけ当日。
 天気は快晴、お出かけ日和。
 朝早く起きた私は、おにぎり、卵焼き、唐揚げなど、慌ただしくお弁当作りに没頭し、先生はナナのおやつや、お水などお出かけの準備をしていた。
 全ての準備を整え、軽く朝ごはんを食べた後出発した。
 運転席と助手席の間にすっぽりと入るボックス型のペットシートを敷いて、そこにナナを座らせた。
 ナナは車に慣れているのか、落ち着いた様子。
 車は高速道路に入った。
「今日はどこのドッグランに行くんですか?」
「サービスエリアだよ」
「え?」
 普段あまり車に乗らない私。
 サービスエリアにドッグランがあることも知らなかった。
 スマートフォンで検索すると、ドッグランが併設されたサービスエリアがたくさんある。
 大型犬と小型犬に分かれており、中にはペット用品を扱うショップまであるらしい。
「よく行くんですか?」
「たまにね。いつも家の中ばかりだから、たまにこういうところでリフレッシュさせるんだ」
「そうなんですね」
「でもナナは人たらしだから、思いっきり走るより、誰かに構ってもらえるほうが好きみたいだな」
 ――人たらしは飼い主に似たのでは?
 会話の中心はナナのことがほとんどだけれど、先生と普通に会話できる日が来るなんて私は思いもしなかった。
 二時間ほど走り、目的地に到着した私たちは早速ドッグランへ向かった。
 人気があるのか私たちのように犬を連れた人を見かける。
「ワンコ連れの方が多いですね」
「ここは人工芝だし、すごく広いから結構人気があるみたいだよ」
「先生も毎回二時間もかけてここまで来るんですか?」
「……違う。いつもはもっと近場のサービスエリアだ。今日はデートだから遠出したんだ」
 私の足がぴたりと止まった。
 ――デート? これってデートなの?
「唯、どうかしたのか?」
「い、いえ、なんでもないです」
 と返したものの、頭の中はデートという文字でいっぱいになった。
 自慢じゃないが、デートというものは今日が初めて。
 それをさらっと当たり前のように言った先生に驚いたのだ。
 ドッグランに着くと、そこはもう犬のパラダイスだった。
 いろんな犬たちが元気に走り回っている。
 中にはじっとしている犬もいれば、ずっとクンクンと匂いを嗅いでいる犬も。
 人間と同じで犬も性格はさまざまだった。
 ナナはというと中に入った途端、勢いよく走り出した。
「すごい走ってますね」
「ああ見えて、アクティブだよ。今はね」
 先生の今はねの意味を知ったのは数分後のことだ。
 ナナが小さい体で全速力で走る姿は、可愛いけど勇ましささえ感じさせる。
 ところが、そんなナナは尻尾を振りながら突然見ず知らずの女性のほうへ。
「ほーら始まった」
「え?」
「私を構って〜っていろんな人のところに行くんだよ」
 先生の言うとおり、ナナはいろんな人に可愛いと言われながら撫でられている。
「こういう時は、絶対に俺のところには戻ってこないんだよ」
 しみじみと言う先生。
 確かにナナはいろんな人に愛想を振り撒きまくっていた。
「なんかすごいですね。人たらしの意味わかりました」
「だろう? ま〜ナナはそれでもいいけど……唯はやめてくれよ」
「え? 何がですか?」
「別の男にホイホイついていくなってこと」
「つ、ついていくわけないじゃないですか」
 私はそんなに軽くないし、そもそも今日が初デートなんですからね!
 と言いたい気持ちをグッと堪えた。
 今日が人生初デートなんて言ったら、絶対にからかわれると思ったから。
 そんなことなど知らない先生は、
「よろしい!」
 と言って私の頭をくしゃっと撫でた。
 先生にとっては何気ない行動だけれど、私にはすごいことだった。
「唯、行くよ」
 先生はいつの間にかナナを抱っこして出口へ向かっていた。
 私はデートも、ドッグランも、髪の毛クシャも初めてなことばかりでずっとドキドキしっぱなしだった。
 再び車に乗り込むと、ナナは疲れたのかすぐ眠ってしまった。
「疲れちゃったみたいですね」
「この後だけど、行きたいところがあるんだがいいかな?」
「はい」
 私がそう言うと車は動き出した。

 着いた場所はとある神社だった。
 先生が言うにはパワースポットとして有名らしく、私も名前だけは聞いたことのあるところだった。
 ここは犬も大丈夫らしいので、リュックタイプのキャリーにナナを入れ、先生が背負って神社へと向かった。
 鳥居を抜けて、緩やかな長い階段の先に本殿はあった。
 パワースポットといわれるだけあって、多くの参拝者が並んでいる。
 先生はこういうことにとても詳しいみたいで、参拝の作法なども教えてくれた。
 参拝が終わると先生は、バッグから何かを取り出した。
「ちょっと御朱印いただいてくるよ」
「え? あっ、はい」
 また新たな発見をした。
 先生が御朱印集めをしているということを……。
 土曜日ということもあり、社務所には数人が並んでいる。
 待っている間ぼーっとしているのも……と思ったのでおみくじを引くことにした。
 おみくじで人生が左右されるわけではないけど、やはり開ける時はドキドキする。
 多くは望んでいないけど、悪い運勢が出たら嫌だな……。
 そんなことを思いながらおみくじを開けると、
 ――大吉!
 内容はというと、難しい言葉で書かれているけど、要約すると、
『思いどおり願いが叶うが、驕りの心があると逆によくないこともある』
『正しい行いをすることが幸福に繋がる』
 とのこと。
 恋愛運は相手の人物をよく見よ。
 御朱印の列に視線を向けたが、すぐに逸らした。
 だって先生と恋愛なんてありえない。
 そもそも先生には好きな人がいるんだから。
 でも結婚する前から比べると、先生の印象は随分変わった。
 優しくて、家にいる時は全く怒らないし、男性だからとか女性だからって性別で物事を判断するような人じゃないし、とても純粋な人。
 そういえば、意外と涙脆かったりする。
 以前に準夜勤が終わって帰宅すると、先生はまだ起きていて、大画面のテレビで映画を見ながらティッシュで涙を拭っていた。
 それは少し前に私が録画しておいた映画で、私も一人の時に見て、ティッシュをボックスごと抱えておいおい泣いた。
 でもまさかそれを先生が見ていたなんて思ってもいなかった。すごく驚いたし、逆にこういう時って声をかけづらい。
 これはそのままお風呂に直行したほうがいいかなと思い、静かに後退りしようとしたが、気づかれてしまった。
 先生は、泣き顔を見られて少し慌てた様子で、
「唯、おかえり」
 と声をかけてくれたが、私は返事ができなかった。
 だって先生の目から涙がポロリとこぼれ落ちたからだ。
 男性の涙を見たのはこれが初めてだったし、綺麗な顔立ちの先生の涙が美しくて、あの時は本当にドキドキした。
 って話が飛躍してしまったが、とにかく毎日が驚きの連続だった。
 職場での態度も、前より優しくなった。
 もちろん大っぴらに優しくなったわけじゃない。
 さりげない優しさというのだろうか、すれ違い様に声をかけてくれたり……。
 私を見る時の目も優しくなった。
 でもそれがかえって私をドキドキさせる。
 もちろん医師としても素晴らしいのは相変わらずで、その上優しいところまで見せつけられて先生への印象がガラリと変わった。
 なんだかこのおみくじ、先生が持っていたほうがいいかもと思ってしまった。
 だって、先生なら驕りの心もないし……。
 これを先生が持っていれば、好きな人と一緒になれるかもしれない。
 私の借金完済という夢は先生が叶えてくれた。
 だから次は先生が夢を叶える番じゃないかな。
 でもそうなると、私との結婚生活は終わる?
 その瞬間胸の奥がズキッとした。
 ――なんで胸が痛いの?
 と思っていると、
「唯、お待たせ」
 先生が急に声をかけてきた。
 自分の小さな心の変化に戸惑っている最中に戻ってきた先生。
 私はびっくりして咄嗟に一歩後ろに下がった。
 その瞬間、私の体がよろめいた。
 後ろに小さな段差があることに気づかなかったのだ。
「あっ!」
 このままバランスを崩して足を挫いてしまうと思ったのだが、そうはならなかった。
「唯!」
 先生が私の腕を瞬時に掴み、よろけそうになった体を自分のほうに引き寄せたのだ。
 力加減がわからなかったのか、思い切り引っ張られた私の体は、まるで磁石のS極とN極のように先生の腕の中に。
 よろけそうになったのと先生と密着していることに驚き、すぐに体を離したが、ドキドキは治る気配がない。
 だけどそんな私の心のうちなど知らない先生は、
「大丈夫か?」
 と私のことを心配してくれた。
「だ、大丈夫です。すみません」
「待たせた上に急に声をかけた俺も悪かった。ごめん」
「いえ、大丈夫です。待っている間におみくじを引いたんですよ」
「そうだったんだ。で? なんだった?」
「大吉です」
 ちょっと得意げにおみくじを差し出すと、先生はまじまじとそれを見た。
「いいこと書いてあるじゃないか。よかったな」
「は、はい」
「このおみくじ結ぶ? それとも持ち帰る?」
「逆に聞きますけど大吉の場合ってどうなんです?」
「どっちでもいいみたいだよ」
「じゃあ、持ち帰ります」
 私はバッグの中におみくじをしまった。
 でも一つ気になることがあった。
 先生は私の手を離そうとしないのだ。
 こういう時どうしたらいいのだろう。
 手を握られたことが全くないわけじゃない。ただそれは仕事の時にパッと触れる程度。
 プライベートで男性と手を繋ぐのは人生で初めてで……。
 結局私たちは駐車場まで手を繋いだままだった。
 たぶん、なんとなくそうしただけだと思うのだけれど、手を繋ぐ相手は私じゃなくて本当に好きな人なのでは? と思ってしまった。


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